第8章

浅野安樹は、まるで初めて会ったかのように白鳥日菜を見つめていた。

「俺を弄んでいたのか」

「違う!」

白鳥日菜は再び彼に手を伸ばした。

「安樹、愛してるの!本当に!」

「愛?」

春美さんの声は信じられないといった響きだった。

「あなたは結婚式の日に、偽りの自殺未遂を画策したのよ!それは愛じゃない、人心操作よ!」

浅野隆がようやく口を開いたが、その声は弱々しかった。

「春美、頼むから、この話は家で――」

「家?」

春美さんは夫に食ってかかった。

「私が床掃除のために雇っている女とあなたが不貞を働いている家のこと?その家のことかしら?」

「二十八年」

春美...

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